大川家具の歴史と榎津指物の起こり５
丁寧に仕上げられた、白木のままの生地箪笥は、塗りを施されますが、蝋を塗り込んだ白木仕上げに、拭き漆仕上げ、黒漆塗りを施したものがありました…。特にその後に蒔絵を入れた豪華な仕上げの箪笥もありました…。桐箪笥（杉と松と桐を併用）にはヤシャブシと砥粉を塗った後に天然蝋の本イボタ蝋で仕上げていました。
又、箪笥の金具は、地元の上巻地区で打たれていた独特の、手打ち金具が使用されていました。この金具には鉄、銅、真鍮等を用いて、薄いタガネによる細やかな透かし彫りを施すという大川独自の手法を用いて、錺（かざり）金具や家紋入りの金具が造られていました。特に取り外し式の丁板が開き戸には使われていましたが、他の産地には見られない大川独自の特長ある金具と言えます。
当時、１棹の榎津箪笥を完成させるには、
- 木挽き職人—–丸太を挽き鋸（のこ）で製材する。
- 指物師—–生地仕上げの箪笥を製作する職人（生地師）
- 塗り師—–漆塗り職人（漆の専門職）と桐箪笥の専門塗り師
- 錺（かざり）金具師—–箪笥のデザインによって特注された錺（かざり）金具を手打ちする職人
- 金具打ち師—–金具の取り付けを行う職人
この様な大川の伝統の中で、磨き込まれた高度な技術を持った、五業種の職人達がその技術力の合わせる事によって製造された作品が『榎津箪笥』だったのです。
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